ドクン……ドクン……。

 心臓が壊れそうなくらい鼓動を繰り返す。

 莉央はよろよろとエレベーターの壁にもたれ、口元を両手で押さえた。


「うそでしょ……」


(夢? これはもしかしてものすごく明晰な夢なの!?)


 自分を追いかけてくる暇などあるはずがない……。京都まで来るはずがない。何しろとても忙しい男なのだ。


(だけど、来た……私を追いかけて。)


 激しい混乱の中、エレベーターが最上階に到着する。とりあえず降りてみれば、羽澄がいるはずのフロアではなく、資料室や会議室が並ぶ、無人のフロアだった。