しばらくすると、
「あー、莉央ちゃまと寝るなんて久しぶりねぇ」
と、陽気な声とともに玲子が入ってきて、ベッドの端に腰を下ろす。

 ギシッとベッドが揺れたが、泣いているところを見られたくなくて、莉央はそのまま寝たふりをした。


「莉央ちゃま、寝ちゃった?」


 玲子の手が、布団の端から出ている莉央の頭を、優しく撫でる。


「ねぇ、莉央ちゃま。これは独り言だけど……。莉央ちゃまはすぐごめんなさいっていうけど、謝らなくていいのよ。もし莉央ちゃまが傷つく自分を恥じているのなら、恥じる必要はないのよ。傷つくのは莉央ちゃまの心がとっても柔らかいから……。だけどそうやって傷ついて、人の痛みがわかる優しさを持てたら……莉央ちゃまは今よりもっと強くなれると思う。何をするにも遅いなんてことないんだから、諦めないで欲しいな」


 そして玲子はそのまま布団に潜り込む。

 莉央は声を押し殺しながら、また泣いた。
 けれどそれは悲しみの涙ではなかった。