けれど目が飛び出るような額の結納金と、毎年莉央の誕生日に送られる一千万で、結城家が首の皮一枚繋がったのはまぎれもない事実。
祖母、そして家長である父は旧家の体面を守りながら死ぬことができた。
そして今、残された母が、莉央に「もういいから」と言って、ここに送り出してくれたのだ。
(お母さん、ありがとう……。)
「あ、お母さんに電話しなきゃ」
バッグからスマホを取り出してじっと画面を見つめる。
「えっと……どうするんだっけ」
莉央はパソコンはおろか携帯の類を持つのも初めてだった。
通っていた地元の女子校はかなり古風な校風で、少なからず莉央のように持っていない子もいたのである。
さらに高校卒業後は、祖母の介護や母の手伝いでほぼ自宅にいたため、必要としなかったのだ。