もちろん、莉央だってこの十年、高嶺が誰とも関係がなかったとは思っていない。
 彼に激しい嫌悪感を抱いていた自分ですら、このザマなのだ。
 しかもタカミネコミュニケーションズのCEOとして精力的に働いている彼は、当然異性には魅力的に映るに違いない。


 だからこそ、あの突然降って湧いて出たような報道に、自分も通り過ぎるだけの人間なのだと思い知らされたのだ。

 高嶺から向けられる自分への熱が、全て偽物だと思っているわけではない。

 キスも。自分を抱き寄せる時かすかに震える大きな手も。
 莉央が欲しいとささやいた、あの声も。
 あの時はそう思ったのだろう。

 けれど所詮それは一過性のものなのだ。

 そんなはかないものをどうして信じられる?