税所家は結城家とそう離れていない下鴨の端にある高層マンションだった。彼らの新しい住まいに来るのは初めてだった。昔の家屋敷は売ってしまったらしい。


「高く売れましたよ。ふふっ」


 地下の駐車場に車を入れ、荷物を出す。


「そういえば、今税所は不動産業をしているんだよね」
「ええ。祖父の代から細々と始めたんですけどね。バブルもリーマンショックも華麗にかわしてそれなりに」


 駐車場から直結のエレベーターに乗り込み、カードを通し、最上階のボタンを押す羽澄。
 スムーズにエレベーターが到着し、開くとそこはすでに玄関フロアだった。


「最上階フロアと下のフロアに住んでいます。下のフロアが両親と祖父の居住区で、上が俺たち兄弟なんですけど、今は俺と姉さんだけですよ」
「小松さんは?」
「小松さんも両親と一緒です。明日会えますよ」