仕事なら生きている限り何度でも挽回できるのに、誰よりも愛しいと思う莉央の気持ちは挽回できる気がしない。


「……莉央、出てくれ……」


 すがりつきたい気分で莉央に電話をかける。
 だが電波が届かないという無機質なガイダンスが聞こえてきて、絶望的な気分になった。

 だが留守番電話に切り替わる。

 話し中にならないということは、着信拒否されているわけではないということだ。

 電話をかけるのもおっかなびっくりという莉央が着信拒否という機能を使いこなせていないだけかもしれないが、それでも今の高嶺には唯一の希望だった。


『莉央、どこにいるんだ。話がしたい……。あの、記事のことだが、あれは全部嘘で、あの男は俺じゃない。同業他社の知り合いだ。女優とは会ったこともない。だから……帰ってきてくれ』