彼にとって高嶺は二十年来の親友で、常に圧倒される存在ではあったが、時折見せる、こういう危うさに関しては、保護者のような気持ちになる。
「ということは、また俺は莉央を傷つけたのか」
『そうだね』
天宮の返答に、頭が真っ白になる。
じっとりと全身に変な汗が噴き出る。
傷つけたくない、手の中の珠のような存在の莉央を自分が傷つけたのだ。
『取り敢えず電話してみな。で、誤解だって話して、迎えに行く』
「わかった」
高嶺は通話を切り、その場にはあっとため息をついてしゃがみこむ。
涙など出ないが、自分の馬鹿さ加減に泣きたい気分だった。
そもそも異性に対してこんな気持ちになったのは、生まれて初めてで、トライアンドエラーで距離を縮めようとしているのに、こうやって取り返しのつかないような失敗をしてしまう。