渋谷にあるタカミネコミュニケーションズ本社フロアは、その社風にふさわしい、都会的で華やかな男女がひっきりなしに出入りしている。


「莉央お嬢さま、本当にこの中に行かれるのですか?」
「もちろんよ、羽澄(はずみ)」


 羽澄と呼ばれたブラックスーツ姿の青年は、ひどく緊張した面持ちで、着物姿の莉央の後ろに立っている。


「緊張しているの?」
「かなり……」
「だからついてこなくていいって言ったのに」
「そんな、莉央お嬢さまをこんなところにお一人で向かわせるなど、この羽澄、ご先祖様に腹を切らされてしまいます」
「またそんなこと言って……」

 莉央はくすりと笑うと、
「さ、行きましょう」
 楚々と自動ドアの奥に入って行き、まっすぐに受付へと向かう。