「高嶺のマンションにいます」
『……あいつも一緒ですか』
「いいえ、一人よ」
『すぐに出て、新幹線に乗ってください。京都駅に迎えに行きます』
「……でも」
『お嬢様!』
羽澄らしからぬ調子に、心臓がぎゅっと締め付けられる。
羽澄は怒っている。けれどそれは自分が彼の信頼を裏切ったからだ……。
兄のように思っている羽澄を傷つけた。その事実に莉央は消え入りたいほど情けなくなる。
「わかりました。戻ります。新幹線に乗る前にまた連絡するわ」
通話を終えて、辺りを見回した。
考えてみれば二週間程度しかいなかった。それでもなんとなく、この場所や、夜景に親しみを覚えていた。