もう一度街頭ビジョンに目をやると、もう内容は変わっていて、司会者の女性が楽しげに料理を作っている。
『料理は愛情ですねぇ!』
確かにそうだろう。
正直に言えば、高嶺が莉央の手作り料理を食べる姿を見るのは、楽しかった。
社会的に成功しているあの男が、他愛もないことで真面目に感心している姿を見ると、莉央の小さなプライドが満たされた。
今まで食事を作っても【当たり前】で、誰かにあんな風に感謝などされたことはなかったから、嬉しかったのだ。
(私、結構ちっちゃい性格してるんだな……。)
じんわりと涙が浮かんだ。
ふらふらとバスに乗り、高嶺のマンションに戻る。気がつけば日はどっぷりと落ちていた。
一階でコンシェルジェから花を渡される。今日の分らしい。