(この人は、設楽先生の恋人なのだろうか……。)
師がどんな女性と付き合っているかなど考えたこともなかったが、この聡明そうな女性なら、なんとなく想像はつく。
だからと言って謝る気にはなれなかった。それは設楽にも彼女にも失礼な気がしたからだ。
「私は、画を描きます。それだけです」
「……そうね」
彼女は頷き、そしてまた窓の外に目をやった。
「あら」
「どうしました?」
つられて莉央も、窓の外に目をやる。
道路を挟んだ向こうの商業施設の、大きな街頭ビジョンが目に入った。
夕方のワイドショーの見出しなのか、センセーショナルな煽りコメントと一緒に流れている。
【IT長者と美人女優の熱い夜!】