「お待たせしました」


 一時間よりも早く、水森がcaféGINREIに姿を現した。
 莉央の前に座り、ブレンドを注文する。


「河合先生、あなたのこと探してらっしゃいましたよ。知らないと誤魔化しましたけど」
「お手数おかけします」
「どういたしまして」


 くすりと笑う水森の手には、ポートフォリオがある。ポートフォリオとは自分はこんな作品を作っていますよ、とお知らせするための作品集のことだ。
 設楽が羽澄の写真をもとに作成し、事前に水森に渡していたらしい。


「設楽先生もお忙しいのに、こんな風にあなたのために時間を割いてくださるのね」