タカミネコミュニケーションズを出てからホテルの部屋に戻るまで、莉央の心は弓の弦のように張りつめていた。
「お嬢様、お茶でもご用意しましょうか?」
主人の様子を見て、部屋の前まで付いて来た羽澄が心配そうに問いかける。
「大丈夫よ。少し眠りたいの……いい?」
時計の時間は午後四時を指している。
「わかりました。では七時の夕食の時間になったらお迎えにあがります」
今日という日がどれだけ大変な日だったのか、羽澄はもちろんわかっている。階下の自分の部屋に戻っていった。
そして莉央は、ドアが閉まった次の瞬間、その場にヘナヘナと座り込む。
「はぁ……疲れた……」
自分の口からこぼれた言葉に、ふと笑みがこぼれる。
「がんばったよね、私……」