一方、シブヤデジタルビルの最上階、社長室で、高嶺は上機嫌で仕事をしていた。

 今日の弁当は和食だった。素朴できちんとした手作りの味がした。

 莉央の手作り弁当を食べるまで、何を食べても大体一緒だと思っていたことが信じられない。

 莉央の作る料理を毎日食べ続けられたら、これほどの贅沢はないと本気で思う高嶺である。


「今日もなんとかして早く帰るぞ……」


 固く決意し、決済を必要とする書類やメールに目を通していると、ノックと同時に天宮が血相を変えて飛び込んできた。


「おい、マサ!」
「……なんだ、その顔。何があった」
「何があったとかじゃないよ、会社は全く問題ないよ、だけど個人的にはサイアクだと思ってるよ」


 天宮が憮然として表情で、PDFを印刷した束をデスクの上にバサッと投げてよこす。