「んー、いきなりですみません。どこかでお会いしました?」
「いえ、初めてだと思います……」


 急に顔を覗き込まれて驚いた。
 基本人見知りなため、声が喉の奥に引っ込みそうになる。


「そうですか。まあ、こんな美人、どこかでお会いしてれば忘れるはずないんですけどね……いやでも本当に雰囲気のある人だなぁ……実に美しい」
「いえ、そんな……」


 賛辞に慣れていない莉央は恐縮するばかりだが、河合がいつまでも不躾なまでにジロジロと見つめてくるので、周囲が何事かと莉央と河合に目を向け始めてしまった。

 画廊のオーナーに挨拶がしたくて来たのに、これでは悪目立ちしてしまうだけだ。挨拶どころではない。


「あの……すみません、失礼します」