自分もそうありたいと思いながら、莉央は改めて礼を言い、設楽のアトリエをあとにした。



 バスの中でファイルを読む。

【銀嶺堂(ぎんれいどう)】
 創業は百年を超える、銀座にある老舗の画廊だった。展覧会歴を見ると、現代美術を代表するような作家の名前ばかりである。
 元麻布からそう遠くない距離だ。


「とりあえずギャラリーにご挨拶に行ったほうがいいわよね」


 莉央は銀座の百貨店で菓子を買い、地図を見ながら画廊へ向かうことにした。

 百貨店が並ぶ大通りから、海外の有名ブティックを通り過ぎる。落ち着いた路地に面したところに銀嶺堂はあった。
 そういった場所なのだろう、周囲を見回せば、ギャラリーがいくつもあるようだった。
 
 ちょうど中では陶器の展覧会をしている。