薄桃色の色留袖姿の莉央の姿を思い出す。
 
 世間知らずの箱入りお嬢様だと甘く見ていたら、見返す瞳はまっすぐで、何が何でも自分の意思を貫くのだという強い意志を見せつけた。

 短気で、どんなことでも負けることを嫌う高嶺も、その一瞬だけとはいえ気圧されたのだ。

 莉央たちが言いたいことを言って帰るのを止めることができなかった。

今更だが、目の前に現れて初めて、結城莉央が一人の人間として存在することに驚いた。


「だが、俺は離婚なんて絶対にしないからな……」


 他人になめられたら終わりだ。
 弱みを見せることは死ぬことと同じだ。
 誰にも、絶対に負けない。

 強く心に決めた高嶺は、ぎりっと唇を噛み締め拳を握りしめ、口元に押し当てた。