「あれを個展用に選びました」
「……個展?」
「ええ」


 設楽はにっこりと微笑んで、うなずく。
 

「それはあの、私の個展ということでしょうか」
「そうですよ。三ヶ月後です」
「三ヶ月後!?」
「スケジュール的にはギリギリですが、ポートフォリオは羽澄君の写真で全く問題ありません。あれこそ真の愛情の産物ですね。誰もあれ以上のものは作れないでしょう。あと、ギャラリーも私が信用するギャラリストのところですから、」
「ちょっ、ちょっと待ってください、先生!」


 思わず莉央は設楽に詰め寄っていた。


「先生が信頼なさっているようなギャラリーだと、数年前から予約でいっぱいなのではないですか?」
「それはもちろんそうですが、それこそなんとでもなるものですよ」


 設楽は名刺とファイルを封筒に入れて、莉央に手渡す。