「それっぽくゴツゴツしてるな」


 声が近い。
 その瞬間、左側がカッと熱くなる。錯覚ではない。本当に熱いのだ。

(私、変な風に意識してない? これって高嶺の思う通りになってる……いや、そんなはずありません。これは錯覚です。)


「えっと、これはね、胡粉を厚めに塗って、爪楊枝で刺してるの」
「なるほど。まさにアボカドの触感だな。日本画はガチガチに描き方が決まってるのかと思っていたが。ふぅん……面白いな」


 高嶺は冷やかしでもなんでもなく、真面目に莉央の画を見ている。


 見られるという行為は落ち着かない。
 莉央にとって見るという行為は己をさらけ出すことでもあるから。

 高嶺がアボカドを食い入るように見ている間、莉央も負けじと高嶺の載った雑誌をパラパラとめくる。
 経済誌と週刊誌、あと若い女性が対象のファッション雑誌まであった。