その日の夜、「雑誌の取材が死ぬほど面倒だった」と疲れた様子で帰ってきた高嶺は、まずキッチンで夕食の準備をする莉央を背後から抱きしめた。
「今日、なにしてたんだ」
「画を描いてました。今日、フラワーショップから届いたヒヤシンスです。本当にきれいで……」
「見たい」
「えっ?」
「見せてくれ。莉央が描いたもの、全部見たい」
高嶺は莉央のこめかみあたりに顔を寄せささやく。
子供のようにねだられて、少しばかり嬉しくもあり、なんだか恥ずかしくなる莉央だが、やはり見せることへの羞恥が大きく勝った。
「お見せするものではないので……えっと、動けないので離してもらっていいですか」
やんわり高嶺の腕を解いて、お皿にロールキャベツをよそう。
高嶺は少し不満そうだったが、素直にそれに従ってテーブルにつく。