そうは言うが、誰に発表するでもない大量の画を分類して保管するなどなかなかできる話ではない。
「それでもありがとう、羽澄。助かりました」
すると電話の向こうの羽澄は、少し間を空けてから、穏やかな口調で言った。
『お嬢様……僕はお嬢様が幸せでいてくれるなら、それだけでいいんですよ。本当です。こう言ってはなんですが……お嬢様は僕の一番の宝物なんです。だからもう家のことは考えずに、自分の幸せを第一に考えてくださいね』
「羽澄……」
羽澄の優しい言葉が莉央の身にしみる。
「ありがとう」
危うく泣きそうになってしまったが、なんとか立て直し、もう一度お礼を言って、通話を終えた。
(羽澄はああ言ってくれたけど、自分の幸せってなんだろう。なにをどうしたら幸せって言えるんだろう……。)