(あのホテル代、やっぱり羽澄のお金なんだ。ちゃんと返さなきゃ……。)


 税所家は大昔から結城家に仕えていた旧い家である。羽澄は五人兄弟の末っ子で、見た目は線が細く頼りなさげだが、ここぞというときには案外肝が据わっている青年なのだ。

 地元のK大を卒業後、結城家に仕えながら、兄弟の事業を手伝っている。その事業がうまくいっているのかもしれない。だが彼の言う通り余裕があるとしても、人のお金で身分不相応に贅沢するのは気がひけた。

(絵が売れたら、そのお金は一番に羽澄に渡そう。)


「あと、設楽先生に写真をありがとう。大変だったでしょう?」
『いいえ、以前からきちんと分類しておりましたから、それほどの手間ではありませんでしたよ』