「落ち着いたら顔を見せに行くと伝えて」
『わかりました。ところでお嬢様、ホテル暮らしにご不便はありませんか?』


 羽澄の問いに、ギクリとした。

 そういえば羽澄にはホテルを出て高嶺と同居していることは話していないのだ。

 だがいまそれを話せば、羽澄は予定を全て変更して東京に飛んでくるだろう。それだけは避けねばならない。


「大丈夫よ。なにも不自由ないから。ただちょっと私には立派すぎね」
『なに言ってるんですか。お嬢様にふさわしいホテルを選んだだけですよ。ああ、でもお金の心配ならなさらないでください。羽澄はお嬢様が思う以上に稼いでおりますので』
「そうなの?」
『はい、ご心配なく』