返す返すも腹立たしかった。

(今更惚れた男と結婚したい? くだらない。馬鹿馬鹿しい。遊びたいなら勝手に遊べばいいんだ。別に俺に操を立てる必要はない。所詮恋愛なんて脳の錯覚でしかないというのに。)

 本当に天宮の言うとおりだとしたら…… 週刊誌は面白おかしく書き立てるに違いない。

 考えるだけで頭が痛くなる。


「六月の株主総会まであと四ヶ月だ。プライベートの事であれこれ騒がれるのは避けたい」
「そうだね。とりあえず奥方様を刺激しないよう、様子見することにしようか」


 というわけで、莉央の新しい男の正体は天宮が人を使って調べさせることになった。


「マサ」

 天宮が、社長室を出て行く時、ふと思い出したように振り返る。