「はぁ……どうしたらいいんだろう」


 深いため息をつきながら台所を片付けていると、莉央のスマホが鳴る。着信は羽澄だった。


「羽澄?」
『お嬢様、お久しぶりです!』


 電話の向こうの羽澄は、いま実家の税所家にいるという。
 本当は明日新幹線に乗ろうと思っていたのだが、入院している祖父の体調があまりよくないので、もう少し実家に残ることを決めたという連絡だった。


『申し訳ありません。祖父も『姫様のところに戻れ』と言ってくれたんですけど、やっぱり心配で……』
「何言ってるの、羽澄。そんなの当然よ……。私も戻れたらいいんだけど」
『ダメですよ。それこそ恐縮して寿命が縮みますから』


 莉央のことを姫様と呼んで可愛がってくれた羽澄の祖父は、莉央にとっても大事な人である。