結城莉央は、顔の造作が美しいだけの女性ではない。強い光の裏に濃い影がある。
 その多面性に高嶺は惹かれたのだ。



「莉央、行ってくる」


 シャワーから出て、派手なロゴTシャツにデニムジャケット、コットンパンツに着替えた高嶺は、アイランドキッチンの向こうにいる莉央を腕を伸ばし、ギュウッと抱き寄せる。


「だから、いきなり、そういうことしないでって!」
「わかった。次からはちゃんと抱きしめると宣言しよう」
「それも違います!」


 顔を真っ赤にして高嶺を押し返す莉央と真顔の高嶺を見て、天宮はくすりと笑う。

 自由になりたい莉央の気持ちも当然だが、今更ながら、親友の初恋が報われたらいいなとも思ってしまった。