ワシワシと髪をかき回し、仕方なさそうにベッドから降りる高嶺は、ふと思い出したように天宮を振り返った。


「ところでなんで俺に連絡なしにわざわざ家まで来たんだ」
「そりゃー、奥方様を見たかったからに決まってるじゃん」
「……翔平」
「その顔やめて。怖いから。いくらマサの片思いでも人妻なんだから……。あ、親友の妻って響きなんかちょっとソソるね?」
「殺すぞ」
「激しい殺意……!」


 ケラケラと笑う天宮を見て、高嶺もまた力が抜けたのか、肩をすくめる。


「お前、マジムカつくな」
「いやフツー笑うっしょ。ギャグでしょ」


 今は社会的地位のある二人であるが、他人の目がないと二十年前の学生時代に戻ってしまう二人であった。