だがそんな莉央の気遣いも虚しく、高嶺は部屋から出てこなかった。

 それどころか翌朝、いつもの時間になっても出てこない。さらに二時間経っても応答なし。
 不安に駆られてドアをノックしても返事はない。

 大人なのだから大丈夫だろうと思っていても、自分があまり体が丈夫ではないので不安になってくる。


 もしかして中で倒れているのでは?
 医者を呼んだほうがいいかもしれないと悩んでいると、マンションコンシェルジェからインターフォンで連絡が入った。


「はい」
『天宮さまがいらっしゃってますが、どういたしますか?』
「天宮さま……?」


 もちろん莉央は知らない名前だ。