体温計を出そうと立ち上がりかけたが、
「莉央」
それをなぜか高嶺が止める。
 そして莉央のウエストにしがみついたまま顔を上げた。


「お前は……あいつが好きなのか」
「好き? あいつって?」
「設楽桐史朗」
「……ええっ!?」


 まさかここで師の名前が出てくるとは思わなかった莉央は、あからさまに動揺してしまった。


(好きなのかって? もしかしたら海外に誘われてること、知ってるの?)


 だがそれはつい先日の話で、莉央は羽澄にすら話していない。高嶺が知るはずもない。
 それに莉央自身、そんなことを考えること自体、あまりにも設楽の好意に甘えすぎて、打算的だとつい先ほど反省したばかりである。


 だがそんな様子の莉央を見て、高嶺は何か感じるところがあったのからしい。