「え?」
「行くな……」


 二度目の「行くな」はとても小さな声で、高嶺から切羽詰まった何かを感じた莉央は、なんとか上半身を起こす。

「どうしたの……」

 だが高嶺は無言で莉央にしがみついたまま、そしてずるずると、お腹のあたりに顔を埋めてしまった。


(意味がわからない……。)


 画を夢中で描いてたことはしっかり覚えている。
 おそらく夢中になっている間にエネルギー切れを起こしたのだろう。そのまま眠ってしまうことは昔から日常茶飯事で、よく羽澄に叱られていた。


 だがこの状況はなんなのだ。
 いつもより何時間も早く帰ってきて「行くな」と高嶺がしがみついてくる。