「あれ……もうそんな時間……?」


 彼女の視線が壁に移動する。
 その視線を追って一緒に針を確認したが、まだ夕方の五時前だった。


「今日は早かったの……きゃあっ!」


 上半身を起こしかけていた莉央が、驚いて悲鳴をあげた。
 ソファに倒れこむように高嶺がのしかかってきたからだ。


「ちょっ、ちょっと、なんなの!? くるしっ……」


 暴れる莉央だが、高嶺の腕の力は緩まない。
 それどころか莉央を切なげにかき抱いて、首筋に唇を押し付ける。


「やっ、ばかっ、なにしてっ……」


 莉央は拳を振り上げてなんとか抵抗しようとするが、高嶺はそのままぎゅっと目を閉じ、声を絞る。


「どこにも行くなっ……」