その瞬間、嵐のような激情が高嶺を襲った。
他人を羨ましいなどと生まれて一度も思ったことのない高嶺が、莉央と設楽の絆のようなものに、目に見えない何かに激しく嫉妬した。
カアッと目の前が赤く染まり、ブルブルと震えが止まらなくなる。
「莉央……っ」
奪われたくない。
指一本、髪一筋だって、触れさせたくない。
自分以外、誰の目も届かないところに閉じ込めておきたい。
だがそんなことをしたら、どうなるだろう。
莉央はきっと変わってしまう。
莉央の目から、心から、自分を惹きつけてならない美しい何かが消えてしまうに違いない。
「……ん」
高嶺の呼びかけに気がついたのか、莉央がまぶたを持ち上げる。
そしてソファに座り込んで自分を見下ろしている高嶺の顔に気づき、大きな目をパチパチさせた。