おそらくエネルギーの使い方が一極集中で、すべてのエネルギーを使い果たすと、そのまま電池が切れたように眠ってしまうのだろう。
「まるで子供だな」
自分もよく天宮にそう言われるのだが、莉央はそれ以上な気がした。
莉央を抱き起こし、ソファに寝かせる。
そして書きかけの画を一枚手に取った。
高嶺は芸術を理解しない。
古い歴史を感じさせたり、技巧を凝らした絵画を見ればすごいなと思う程度だ。
だが莉央の画は、どこか高嶺の気を引いた。
欲しいと思う女が作り出したものだからかもしれない。
そのチューリップを見ていると、おそらく莉央の内面に眠る、はつらつとした明るさのようなものが伝わってくるのだ。
こんな莉央を、自分は知らなかった。
設楽桐史朗という莉央に画を教えた男は、ずっと昔から同じ景色を見ていたのかもしれない。