高嶺が、激しい焦燥の中タクシーを飛ばしてマンションの部屋に帰ってみれば、莉央はリビングのテーブルの下で丸くなって眠っていた。


「いた……」


 報告書を読んだとき、彼女はもうここにいないような気がした。

 だからすぐに帰って莉央の顔を確かめないわけにはいかなかった。

 だが、いつまで彼女がここにいるのか、わからない。
 自分の翼で飛んで行こうとする鳥を閉じ込めておくことはできるのだろうか……。

 どうやったら……。


 とりあえず着ていたジャケットを脱いで莉央の肩にかける。
 テーブルの上には何枚もの画が、まるでそこだけ花畑のように広がっていて、絵具も散らかったままだった。


「莉央……」


 思えば莉央は、よく力つきるように眠っている。