芸術にはまるで縁のない高嶺である。
例えば考古学的価値でもあれば理解できるのだが、現代の作家の絵が一億円と言われたら、さすがに理解の範疇を超える。
資料と一緒に着物姿の男の写真が挟んである。
見ると年の頃は四十代前後の、かなりの美男である。
「おい……」
「日本画家だから爺さんだと思ったでしょ。残念だったね」
「……翔平」
嫌な予感に顔を上げると、彼は王子様のような甘い笑顔でさらりと毒を吐いた顔である。
「まだおおやけにはなってないけど、彼は今、水面下で国内外の有名な美術商を集めようとしてる」
「どういうことだ」
「愛弟子のため、彼女が一人の日本画家としてデビュー出来るようにサポートしてるらしい」