「俺は……そんなこと知ろうともしなかった」
「仕方ないんじゃないの。だってそういう契約だったじゃん。あれはまともな結婚じゃない、マサとお父さんのゲームだったんだから。娘を売った結城家がどんな生活をしているのかなんて、気にするくらいならこんなことしちゃいけなかったんだよ」
「……そうだな」
「一応言っとくけど、マサ一人を責めてるんじゃないよ。俺たちのこの会社はそうやって大きくなったんだって、俺は理解してる」
「ああ」


 慰めになるようなならないような、天宮の言葉に高嶺は唇を噛み締めまた先を読み進める。


【日本画家、設楽桐史朗に師事。唯一の弟子であるが、公募などの経験はなし。】


「誰だ、設楽桐史朗って」
「聞いたことない? 外国で今一番人気がある日本画家」
「ない」
「嘘でしょ。すっごいニュースになったじゃん、こないだ彼の描いた屏風絵がメトロポリタン美術館に一億で買われたって」
「はぁ!?」