「え……」

 衝撃で思わず声が漏れた。

 てっきり莉央は、大学を出ていると思ったのだ。

 さらに読み進めると、ほとんど家を出ず、母と一緒に祖母の介護をしながら、慎ましやかな生活を送っていたことがわかる。


「おい、翔平。これはどういうことだ」


 隣に立ち、同じように文字を追っていた天宮を振り仰ぐ。


「んー、あの御当主、事業の失敗の穴埋めや、家庭を維持することに結納金を使わずに、懲りずにまた新しい何かをしようとしたみたいだね。まぁ、案の定失敗してるけど……。うちのお金で安定した生活できるようになったのは、当主と金使いの荒いその御母堂が亡くなってからで、奥方様が成人して以降だね。それまではけっこうやりくりが大変だったみたいだよ」


 結城家には高嶺からの現金以外にも、不動産があった。それを貸して食べるには困らない程度の収入があったはずである。