そして莉央がキッチンであれこれと動いている間、高嶺は言われたとおり莉央の邪魔にならないよう、つかず離れずのところで楽しげに莉央の様子を眺めていた。
(高嶺正智……この人と話していると、調子が狂う。たった今大嫌いと思ったはずなのに、もう毒気を抜かれそうになってる……。)
私がおかしいのだろうか。
いや、この男が規格外すぎるのだ。
子供のように無邪気に見せて、大人の狡猾さも併せ持つ。恐ろしく野蛮なのに人の心を読むのにも長けている。
(それでも私は、この人の言葉になんか耳を貸さないんだから……。)
今はそう自分に言い聞かせるしかなかった。