高嶺の声はよく通る。
 莉央の心臓が意図しないレベルで跳ね上がる。


「ちょっ……」


 なんという男だろう。
 あれほど嫌いだなんだと拒絶されて、まだこのいいように開いた口がふさがらない。

(私の気持ちが変わるはずない。十年のこの思いが、そんな簡単に消えるはずがない!)

 そう思うのだが、莉央は一方で高嶺の不思議な魅力に惹きつけられてしまう自分が怖くもあった。


「やめてよ、そんなの聞きたくない」
「夫が妻を欲しがって何が悪いんだ?」


 そして高嶺は体を起こし、羞恥に顔を赤く染めながらも果敢に睨み返してくる莉央を見下ろす。


「素直になることに決めた」
「素直って?」
「お前を見習ってな」
「……単純だって言いたいのね」
「魅力的なんだ」