「いや、覚悟するのは俺だけじゃないぞ。お前もだ」
「どういうこと?」


 高嶺はソファの背もたれに腕を回し、莉央に体を寄せた。

 高嶺の体が近づくと、それだけで莉央の体温も上がるような気がする。

「近いですっ」

 莉央は身じろぎしながら迫ってくる高嶺の顔を見返した。

 けれど彼はそんな莉央の抗議もどこ吹く風といったふうに、眼を細める。


「俺にだってお前が欲しいと言う権利がある」
「権利!? なっ……何を言ってるの!?」


 莉央は驚愕して目を丸くした。
 だが高嶺はその切れ長の目をやんわりと細めたまま、さらに莉央の耳元に唇を寄せた。


「毎朝毎晩、ささやいてやる。お前が欲しいと、熱烈に。根気よく言い聞かせれば、いつか莉央の気持ちが変わるかもしれないだろう」