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莉央をソファに座らせ、高嶺はホットミルクを作り、彼女にマグカップをもたせた。
「……ありがとう」
莉央はぼうっとする頭でミルクを飲み、それから洗面台で顔を洗って戻ってきた。
「少し、考えさせてくれる?」
「えっ?」
「あなたとのこと。考えさせて」
「……わかった」
ホッとしたように高嶺はうなずく。
今すぐ出て行くと言われなかっただけで、高嶺の中では【勝ち】だった。
だが莉央は、高嶺とこのまま結婚生活を続けることなど微塵も考えていなかった。
(真正面から離婚してと言ってもダメ。だったら私は一刻も早く自立しないといけない。設楽先生に頼ることも出来るけど……きっと先生なら助けてくれるけど……先生と一緒に外国に行く決心がつかないままでは、そんな無責任なことは絶対にできない。)