いくら莉央が身をよじって逃げようとしても、高嶺の力は緩まない。
いくらなんでも一方的過ぎる感情に、悔しさのあまり、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
「莉央……」
高嶺は莉央の頭を支えるように持ち、顔を覗き込む。
「きらいっ……あんたなんか、だいきらいっ……」
せめてもの抵抗にと嫌いと叫び続ける、莉央にできることはそれだけだった。
だが高嶺は、苦しげに眉を寄せながらもそれを受け止める。
「わかってる」
ここまで言われれば、世界一嫌われたという自覚はある。それでも高嶺は莉央の目を、心を、覗かずにはいられないのだ。
「だけど俺は、お前が欲しい……」
高嶺にこんな声が出せたのかと、彼を知っている人間なら耳を疑っただろう。
狂おしいまでに切なく、全身全霊で莉央を求めるその声に、莉央は震えが止まらなくなった。