「そういえば何が嫌いとか聞いてなかったけど……」
ゆで卵とシリアルで生きている高嶺に好き嫌いを言われたら逆に腹が立ちそうである。
「いいわ、なんでも食べさせよう。大人なんだし」
自分に言い聞かせるように、塩おにぎりと豚汁、白和えを作り、ラップをかけカウンターに並べる。
そして使ったキッチン用品を洗い片付けてしまうと、途端に莉央は押し寄せてくる漠然とした不安に押しつぶされそうになった。
当然、脳裏に蘇るのは設楽のことである。
(離婚したら先生と海外……。)
突然の告白に莉央は当然驚いたし、返事もできなかった。
設楽は戸惑う莉央に「返事はいつでもいいですから」とその場で決断を迫らなかった。
けれど莉央は、正直自分がどうしたいのかなど考えつかない。