そんな副社長の心配をよそに、高嶺は百貨店の外商担当に電話をかけ、至急、老舗高級宝飾店のアクセサリーや洋服、その他の洋品ををいくつかを持ってくるよう告げる。

 外商が慌ててトランクケース持参で社長室にやってくると、高嶺はそれを適当に選び一括で支払いをすませた。


「家に妻がいるから、他にも適当に見繕って彼女に渡してくれ」
「かしこまりました」


 その一連の流れを見ていた天宮は、何か言いたげにしていたが、結局肩をすくめて社長室を出て行ってしまった。

(翔平はあれこれ言うが、宝石も洋服も、女はみんな好きだろう。腐るもんじゃなし、もらって困ることはないはずだ。)

 それに、どれも莉央に似合うに違いない一級品である。

 美しく着飾った莉央が喜ぶ顔をすると、高嶺は満ち足りた気分になった。


(とりあえず今日は仕事を済ませて早く帰ろう。)