そして高嶺から手早く話を聞いた天宮は、はあ、とため息をついて首を横に振った。
「要するに、十年間ほったらかしにしてた奥方様に恋しちゃったわけね」
「なんだよ、恋って。気持ち悪いな」
「いやいやそれってお前のことだよ?」
眉根を寄せて怪訝そうな表情を浮かべる高嶺に、天宮は一応突っ込んでみる。
「俺はただ……莉央が欲しいだけだ。手放したくない。そばに置いておきたい。いつも見ていたい。それだけだ」
「だからさ……欲しいとか手放したくないとか……奥方様だってモノじゃないんだって……っていうかほんとそれ完全に恋だし……」
「お前の言うことはよくわからん」
「はぁ、そうですか……」
たとえ言葉を尽くして忠告したとしても、おそらく高嶺には通じないということは天宮自身が一番分かっていた。
高嶺はある種の天才で、当然我慢など生まれて一度もしたことがない。
その性質も、特殊な生い立ちのせいか、かなり世間とずれているところがある。