タカミネコミュニケーションズ社長室は、少しばかり異様な空気に包まれていた。
明らかに高嶺が浮かれているのだ。
もちろん仕事に差し障りはないが、学生時代からの親友である天宮の目は誤魔化せない。
「ねぇマサ。何があったの。気持ち悪いんですけど……」
「莉央が弁当を作ってくれた。これだ」
天宮の言葉を待っていたかのように、意気揚々と包みをデスクの上に置く高嶺。
「は? りお……って奥方様の?」
普段めんどくさがって、シリアルしか食べない高嶺がなぜ愛妻弁当を持参するに至ったのか。
そもそもいきり離婚届を突きつけられて激怒していたのではなかったか。
まったく理解できない天宮は、高嶺の顔とお弁当の包みを交互に見比べる。
「マジかよ……って、なにがどうなってそうなったの? 五分で説明して」