タブレットはおろかスマホですら満足に扱えない自分が行っても、ただのお荷物にしかならない。

 先生は何か勘違いをしているのだと言いかけた瞬間、莉央の膝の上の手に設楽の手のひらが重なった。


「貴女は元々私の婚約者です」
「え……?」

(婚約者?)

 設楽の言葉の意味をすぐに理解出来ず、莉央は言葉を失う。

 設楽はいつになく熱っぽい声で、目で、莉央の名前を呼ぶ。


「莉央……。婚約者と言っても、おそらくご両親もご存じない、私と貴女のおばあさまとのただの口約束です。でも、貴女のことはずっと気になっていました。いつか私の妻になる人かもしれないと……見つめていました。それなのに、まさかあんな形で貴女を奪われるなんて想像もしなかった……」


 そして莉央の体はそのまま抱き寄せられていた。