「ミィ!」


駆け寄ると、美月ちゃんが微かに笑う。


「49日目だ。やっぱり、昔の人の言うことは当たるねえ。すごいや」

「やだよ、やだ」

「ねえ、ヒィ。体、貸して」


美月ちゃんが細い腕を伸ばして、私を抱きしめるように体を重ねた。
ふっと体の奥に押し込まれる。
私を支配した美月ちゃんは立ち上がれないのか、ぺたりと座り込んだ。


「……ヒィ? どうしたんだ?」

「あーくん。……あたし、そろそろこの世界からいなくなる」


美月ちゃんは、眉根を寄せた園田くんに言った。


「……は?」

「今日があたしの、最後の日なんだ。あたしは、もうこの世に留まっていられない」

「何言ってんだよ!」


園田くんが、駆け寄ってくる。
彼は座り込んだ美月ちゃんを強く抱きしめた。


「そんな冗談、絶対言うな」

「冗談じゃないよ。もう、無理なんだ」


美月ちゃんが手を動かして、園田くんの背中に回す。
だけどその動きはひどく緩慢で、頼りなかった。園田くんが、その力の入らない腕に息を飲む。