夜は、美月ちゃんの指示の元、三人で料理を作る。
スペアリブの煮込みや、トマトのサラダ。卵のスープなど、男の子二人があまり包丁を使わなくて済む料理ばかりだった。
しかも、おいしい。


「ふおお、おいしい」

「肉最高!」

「ああ、運動した後だし、滲みるくらい美味しいよ、美月ちゃん!」


モリモリと食べる私たちを見ながら、美月ちゃんは少し微睡んでいた。


「ふふ。いっぱい、食べてね……」


食べながら、私は穂積くんと目を合わせる。

大丈夫? と問うような瞳に、小さく頷く。

今日はまだ30日だ。
もし何かあるとすれば、明日。

だけど、明日のいつ?
日付が変わって、すぐ? 
美月ちゃんが亡くなった時間?
それとも、日付が変わるギリギリまで?

時計を見上げると、20時を少し過ぎたところだ。

……まだ、一緒に居られるよね。
言いようのない不安が胸の中で暴れる。
さっきの美月ちゃんの言葉がぐるぐるとまわる。
あんな、遺言みたいな言葉、ききたくないよ……。
耐えられなくて、胸元をぎゅっと抑えた。



「どした、ヒィ」


園田くんが不思議そうに私を見る。
口の端にソースをつけたきょとんとした顔。
その顔に、私はへらりと笑った。


「……食べ過ぎた。お腹パーンしそう」


園田くんが、笑った。


「今日はいっぱい運動したし、もっと食っても大丈夫だ」

「いやいや、パーンしそうなんだって」

「杏里、自分の腹具合で考えるの止めろ。ヒィちゃんが爆発する」

「爆発? まじでか」


園田くんが、ますます笑う。

その笑顔を見たら、良かったと思う自分がいる。
一秒でも、この笑顔が長く続けばいい。
この顔が曇るところなんて、見たくない。