着ていたTシャツが汗でぐっしょりと濡れた二人を連れて、コテージに戻る。
汗臭い二人だけれど、しかし満足げだった。
記念品は、四つに増えていた。
もらいすぎだろ。


「とりあえず、シャワー浴びて来れば?」

「いや、ここは先にこれでしょう!」


穂積くんが、水鉄砲を取り出す。


「どうせ濡れてるんだし、やるぞ、杏里」

「おう! ヒィたちも、やるぞ!」

「ええ⁉」


それから、コテージの前で強制的に水鉄砲で遊ぶことになった。
おっきいせいなのか水圧が高くて、当たるとけっこう痛い。

コテージが他と離れているのはとても都合がいい。
少しくらいはしゃいでも、迷惑をかけることはないはずだ。


「うりゃ!」

「うお、痛い!」

「隙アリ!」

「ひゃあ、冷たい!」


私と美月ちゃんは体を交換しながら逃げて、撃って。
びしょ濡れになって遊んだ。
Tシャツはすぐにずぶぬれになって、バスタオルを首にかけて撃ち合った。

夢中になっていて、気付けば太陽は大きく傾き始めていた。

青空に滲んでいくように、オレンジが広がっていく。
青とオレンジの境目が、緑色にも見える。
その合間を千切れたような雲が浮かんでいて、それに向かって羽ばたいていく鳥の姿があった。


「うわ、綺麗だなー」

「ほんと。ビアスタッドの夕暮れみたい」


目を細めてその景色を眺める。園田くんが私の顔を覗き込んだ。


「ビアスタッドって?」

「えっとね、ドイツ出身の画家さんで、綺麗な風景画を描く人なの。ちょうどこんな夕暮れを描いてた」

「へえ。俺はやっぱり……」

「スイカでしょ」


くすりと笑って言うと、園田くんが「今日は違う」と言う。


「入道雲がでてる。コーラフロートだな」

「あはは、斬新なイメージだね。でもたしかに、しゅわしゅわ感があるかも」


二人でクスクス笑うと、穂積くんたちが不思議そうに見る。


「コーラフロートって、なに?」

「この空。園田くんが、コーラフロートみたいっていうの」

「なんだ、それ。杏里、腹減ったのかよ」

「そうじゃねえよ」

「ジュースだっていうなら、あたしはコーラよりトマトジュースだと思うけどなあ」


四人で、混じり合った空が一つの色に変化していく様子を眺めた。

山の向こうに消えて行く光はとても、綺麗だった。